「700万人って何の人数だと思いますか」という問い掛けから、重光さんのお話は始まりました。この人数、日本で指定外・研究途上の難病者の人数だそうです。こういった指定外の難病で悩む方は、いわゆる通常の保険診療や高額療養などの社会保障サービスだけで、障害でもないから就労支援サービスもないという問題に直面しています。重光さんが患う脳脊髄液減少症のように、24時間365日痛みに苛まれているにも関わらず、見た目から人には伝わりにくく、理解されにくいといった現実とも向き合わなければならない人もいます。
先ずは、重光さんを含む難病当事者のリアルな日常を撮影した映像を全員で視聴。そこで流れていたのは痛みのあまり、壁を殴ったり、陶器を投げつけて割ったりする姿。自ら自販機で購入した缶コーヒーを飲みつつ、河原で行き交う人を目にして、「孤独が少し和らぐ」と話す姿。痛々しい、重いとも感じられる映像かもしれませんが、参加者の皆さまは誰一人として目を背けることなく、その映像と向き合っていました。
映像視聴後、再び重光さんのお話を伺いました。重光さんは今、「難病で悩む人にとって心強いと思ってもらえる存在でありたい」、「難病当事者が働けるロールモデルを作りたい」という思いで日々、活動していると仰っていました。孤立しがちな難病当事者が、多様な形で「働く」ことで社会参加につなげていきたい、その為には多くの人に知ってもらうことが大切との言葉に、多くの参加者が頷きつつ、真摯に耳を傾けていました。
「期待し過ぎず、でもあきらめないで」、生きることがつらいと感じている難病当事者に重光さんが伝えている言葉を全員で共有し、重光さんのお話は終わりました。
その後、グループディスカッションを経て行われた重光さんとのクロストークでは、お話の感想や難病当事者の社会参加のアイディア等、様々な意見が飛び交い、会場は熱気に包まれていました。その一部を紹介させていただきます。
・なぜ、難病当事者を許容できない社会なのかと考えると、結局は一人一人の心に余裕がないからだと思う
・多様性が認められる社会にしていかなければならない。その為には、例えば会社の人事等がもっと率先して制度を理解し、現場での受け入れ体制を整える必要がある
・会社に「行く」ことが全てではない。多様な働き方を認める世の中にしたい
・そもそも「多様性」という言葉が独り歩きしているように感じる
・難病当事者の方も、周囲に知ってもらう為の努力が必要ではないか
この他にも、ある参加者の「私も難病当事者だが、これまでは紙くずを丸めて投げつけるくらいしかできなかったけど、少しくらい物を投げても良いんだと思えて、とても励まされた」という言葉に参加者の皆さまから暖かい拍手が送られ、今回のテーマ「あなたの生きるは誰かの生きるにつながる」を象徴するシーンになりました。また、既に退職したあるシニアの参加者の方の「自分達のような時間に余裕のある層が、難病当事者の方のお役に立てることはありますか?」との質問には、重光さん自身も「そういう意見をいただけること自体も大きな発見です。お互いを知る、お互いが出会うきっかけをもっと増やしていく必要性を感じました。私自身、今日はハッとしました。」との感想を仰っていました。
最後にTHINK UNIVERSAL(多様性理解)から、THINK POSSIBILITY(多様な社会参加へ)という方向性を参加者全員で共有し、フミコムcafeは終了しました。
アンケートのコメントも一部、紹介致します。
・実際の苦しさはわからないが、わからないなりに寄り添う姿勢が大事
・痛みを抱えながら社会に発信している姿勢が、素晴らしいと思いました
・身近にも難病の人がいるかもしれないという認識を持つこと、そしてその輪を広げること
・知ること、それを伝えていくこと、力になりたい人を増やしていくこと
イベント終了後も、重光さんと参加者の方、あるいは初めて会う参加者同士が話し込む場面も見られました。共に考え、アイディアを出し合ったこのメンバーのつながりが、やがて大きな力になっていくことを願っています。
フミコムでは今後も地域の課題を知るはじめの一歩、新たなつながりを創るきっかけの場としてフミコムcafeを開催していきます。これまでご参加いただいたことがある方はもちろん、そうではない方のご参加もお待ちしております。