色合い
文字サイズ
活動報告・発行広報物

【開催報告】第65回フミコムcafe オンライン 知って、伝えて、「防ぐ」につなごう 人ごとではないデジタル性暴力のこと

地域連携ステーション フミコム
  • 文京区全域
  • まちづくり・安全
  • 国際・人権・男女共同
  • 職業・暮らし
日時:2021年8月18日(水)19:00〜20:30
会場:オンラインにて開催
ゲスト:金尻カズナさん(NPO法人ぱっぷす理事長)
最大視聴者数:33名(*zoom参加者、YouTube LIVE配信視聴者の総数)

今回のフミコムcafeは、デジタル性暴力被害に遭われた方の相談支援を行いながら、加害予防の啓発活動を行っているNPO法人ぱっぷすの金尻さんをゲストに迎え、お話を伺いました。

近年、若年層を中心に急増しているデジタル性暴力被害。(※1)
こうした問題は、どうしても「被害を予防するには」というところに考えがいきがちですが、
被害予防ではなく「加害を予防すること」も大切だと金尻さんは言います。
また自分は大丈夫と思いがちな問題でもありますが、相談窓口に来られる方は、「まさか自分が巻き込まれるなんて」とお話される方が多いのだそうです。
今回は、相談支援の現場からみたデジタル性暴力被害の現状や、被害予防、加害予防について実際の相談事例を交えたお話を伺いながら、こうした問題を防ぐために、自分には何ができるのかを考える時間となりました。

(※1)デジタル性暴力
インターネットやSNSを通じて性的な画像・動画を要求されたり、同意なく拡散されること。
●NPO法人ぱっぷすの活動について
デジタル性暴力と性的搾取の被害に遭われた方の相談支援を行いながら、その現状から見えてきた課題の解決に向けて活動をしている団体です。
特にデジタル性暴力被害は、このコロナ禍で若年層を中心に増えています。
また性的な画像や動画が一度でも拡散してしまうと、その先ずっと権利侵害が続くことになります。
そのため、こうした被害に遭われた方の相談支援や画像、動画の削除を行っています。
ぱっぷすでは、相談を受ける際に、被害に遭われた方に、今後どうしたいかのイメージを伺って、ビデオ販売の事業者と交渉したり、刑事事件となる場合は刑事事件課につなげるなど、ご相談者の意向に沿う形で、相談支援を行っているそうです。
期間としては収束まで半年から1年以上かかるケースが多いそうです。
papscafe3.jpg
●支援の現場から見た現状
被害に遭うのはSNSを通じてが多いと金尻さんは言います。
SNSは無料のものが多く、匿名性も高いです。またスマホで操作ができ、画像と動画の投稿や、ダイレクトメッセージで個人間でのやり取りができます。
だからこそ、いつでも画像が簡単に拡散できてしまい、拡散された画像はデジタルタトゥー(※2)となってしまうのです。最近はGPSが付いているアプリもあり、自分がどこに居るかが友人ともシェアができるそうです。ただ、こうした居場所が特定できるようなアプリの利用は被害に遭う危険性も高まります。

(※2)デジタルタトゥー
インターネット上に書き込まれたコメントや画像などは、一度拡散されると消す方法が少なく難しいため、半永久的にインターネット上に残されるという意味。
●若年層に特に多い相談ケース
特に多いのは、性的な画像を送ってしまった、盗撮されて画像や動画を拡散されてしまったというスマホにまつわるご相談がとても多いそうです。
ただ誰かに相談したら、親に迷惑がかかるのではないか、学校に知られて大変なことになるのではないかと心配をして、誰にも相談できずに抱え込んでしまう場合が多いと言います。
逆に、性的搾取をする側としては、親に相談できない、誰かに相談しにくい問題だとわかっているからこそ、声をかけてくるのです。そして「あなたも性的な画像を送ってきたのだから、犯罪に加担しているのだよ」と言い、誰にも相談できない状況をつくるのだそうです。
実際にぱっぷすさんにご相談に来られる方の多くも、誰にも相談できずにずっと悩んでいた方、またご自分の行動を責める方が多いのだそうです。
papscafe6.jpg
●パートナー同士の撮影は?
パートナー同士で、性的な写真を撮ることに対しては、あまり抵抗を感じない方も居るかもしれません。プライベートだから撮影は問題ないように感じるかもしれないけれど、撮影した側は、その画像を後で見返すことはいくらでもできます。
撮影された側は、撮影には同意したかもしれないけれど、撮影後の画像をどのように扱われるかはわかりません。たとえパートナー同士であっても、撮影された側は不安を抱く方も多いと金尻さんは言います。
●もし被害にあったらどうしたらよい?
すでに画像や動画が拡散されている場合は、画像のスクリーンショットを撮るなどして、証拠を残しておくことが大切だそうです。
また実際に被害にあった時にどうしたらよいかは、大人であればある程度考えられることですが、児童にとってはハードルが高いものです。また、学生さんは、警察に相談したら、学校にも言われてしまうのではないかと心配される方も多いと言います。
ただ、金尻さんは警察に相談するからといって、学校生活に影響するようなことはありません。これは「相談していいことなんだ」と知ることが大切です。こういった性的搾取による被害は、被害に遭った側も、自分を責めてしまうことが多いですが、そうではなくて、この問題を野放しにしている社会の問題であるということと、性的搾取の事業者を含め、それを傍観している人たちが多くいるというところに問題があると金尻さんは言います。
また、「画像を要求された時、断れないなら逃げていい。断るに理由はいりません。
逃げられないときは、きちんとした相談窓口に相談することが大切です」と金尻さんはお話しくださいました。
papscafe8.jpg
●加害がなければ被害は起きない
被害を防ぐことは、これまでずっと行ってきました。でも、被害の予防では加害は減らないと金尻さんは言います。
加害が減らないと被害は減らない。被害者を減らすという従来の考えを変えていくことが大切なのです。
加害予防のための啓発活動を行っていくことで、被害に遭われた方も、これは犯罪なんだ、自分は被害を受けたんだと考えることができます。
ただ、この問題は加害予防教育をするだけでは解決はしません。被害を受けた時に、保護もされなくてはいけないし、加害者は処罰を受ける必要があるのです。
そして、被害に遭われた方が社会復帰できる仕組みも重要になってくるのです。
またデジタル性暴力はグローバルな問題でもあるので、国際連携も重要になると言います。
最後に性的搾取のない世界を次の世代へ伝えていくことが大切だとお話しくださいました。
●参加者からの質問
講座の後半は、参加者から寄せられた質問や意見に答えていただきました。
その一部をご紹介します。

【質問】
今回のお話は、撮る側=男性、撮られる側=女性…というイメージがスライドのイラストからも想起しやすかったのですが、男性が被害者というケースもあるのですか?
⇒(金尻さん)ぱっぷすへのご相談の3%が男性です。
モデルになりませんかと声をかけられて被害に遭われるケースもあります。

【質問】
出会い系サイトを利用する若者がこのコロナ禍で増えてきていると思います。そこで、最近の相談内容に変化はあるのでしょうか。
⇒(金尻さん)出会い系サイトと言うより、若年層で多いのは、半径500m以内でお友達を探しま
しょうというアプリの使用です。すぐそこに性的搾取を目的とする事業者は、わんさかいます。
アプリの簡単にダウンロードできてしまうので、被害相談としては増えています。
また、婚活サイトもからも性被害に繋がることもあります。

【質問】
小学校高学年の子どもがいます。思春期の子どもに伝えるべきことは何かありますか?
⇒(金尻さん)性的同意についてぜひ伝えてほしいです。
「同意って何?」という本があります。このような本を使用して伝えていただくのもよいかと思
います。
本編は以上となります。
このような問題は誰かに相談しにくく、ひとりで抱え込んでしまう方が多いと思いますが、「ひとりで抱え込まなくていい」「相談していいんだ」と思うこと、そして相談できる機関があることを知ることが大切ですね。
5月のフミコムcafeの「子どもの権利」のお話の中で「困っていることがあったら声をあげていい」「そういうことも言っていいんだという環境をつくることが大切」というお話と通ずるものがあるなと感じたフミコムcafeでした。
20210818.jpeg
そして、今回もグラフィックレコーディングに挑戦してくださいました!
ヤマダさんありがとうございました!!

●本日のお話に出てきた団体のリンク先をご紹介します。
* NPO法人 ぱっぷす:URL  https://www.paps.jp/

●相談窓口等、関連URL
*インターネット・ホットラインセンター
https://www.internethotline.jp/
*違法・有害情報相談センター
https://ihaho.jp/
*一般社団法人セーファーインターネット協会
https://www.saferinternet.or.jp/
*法務省 みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken20.html
●ご視聴いただいたみなさまからの感想
イベント終了後、ご視聴いただいた多くの方にアンケートにおこたえいただきましたので、一部ご紹介します。

・まさに、数日前友人から娘のリベンジポルノの被害を打ち明けられたところでした。まずは社会
 の現状を知る具体例を当該世代に伝え、被害者も加害者もなくすことが必要だというところ。
 スマホやSNSの悪い面もしっかり知ることが大切。
・スマホは便利なものでもあるけれど、極めて高機能な盗撮機材であることに、確かにと思いまし
 た。そこから、機材そのものに『性的画像』を撮れないようにする仕組みは出来ないのかなぁ、
 とも考えてしまいました。
次回のフミコムcafeは2021年10月20日(水)
「『夜のパン屋さん』から考える ロスのない循環する仕組みづくり」をテーマに開催予定です。オンラインにて配信予定ですので、ぜひご参加ください!
https://www.d-fumi.com/article/detail/1501


その他、フミコムではさまざまな講座を開催予定です。フミコムHPやフミコムFacebook等でお知らせしておりますので、ぜひご覧ください。
▶フミコムホームページ
https://fumicom.tokyo/
▶フミコムFacebookページ
https://www.facebook.com/bunkyofumikomu/