●なぜ出所者の支援を?
きっかけは、自分の運転する車で事故を起こしてしまい、同乗していた野球部の仲間を亡くしたことでした。重大な事故を犯した自分の責任の取り方がわからず、家に塞ぎこむようになったという千葉さん。そんな時に野球部の仲間の声に救われたそうです。
まわりの仲間からの声かけもあり、自分にできることは何かを考えるようになりました。
ちょうど事故のことで、裁判に関わっていた千葉さんは、弁護士になろうと考え、司法試験を受けました。10年勉強しながら受け続けたそうですが、合格することはできませんでした。今後どうしようか考えている時に、たまたま歌舞伎町にある駆け込み寺というところで、人の募集をしていると知り、ここで社会貢献活動をして、誰かの役に立とうと思い、働き始めたそうです。
●日本駆け込み寺での活動
男女、年齢問わず、さまざまな方たちが、訪れる駆け込み寺。
そのなかには出所者からの相談もあったそうです。
そのような方たちの相談に乗るなかで、まずは出所者が働く場所が必要と考えた千葉さん。駆け込み寺の代表とともに、出所者が働ける居酒屋をつくるとになりました。ここで、できたのが「駆け込み餃子」だそうです。
ただ、働く場所が確保できても、出所者は家がないことも多いと言います。そこで、駆け込み寺の隣の建物で自立準備ホームを運営することとなりました。この自立準備ホームの設立にも千葉さんは関わったそうですが、さまざまな事情で、この自立準備ホームは閉鎖することとなりました。
しかし、出所者の支援をするにあたって、まずは、住む場所があることが大切だと感じていた千葉さんは、なんとか出所者を支援したいと考え、自立準備ホームの開設・運営を始めたそうです。
*公益社団法人 日本駆け込み寺:https://nippon-kakekomidera.jp/
*新宿駆け込み餃子:https://www.kakekomi-gyoza.com/
●出所者のその後について
まず、出所の方法は2通りあり、仮釈放と満期出所があります。
仮釈放は刑期満了前に仮に釈放されるとこととされ、一定の条件が付けられています。
仮釈放の場合は身元引受人や帰住地があり、また保護司の面談なども必要になるため、帰る場所が一応確保され、支援してくれる人もいます。しかし、満期出所の場合は、こういった条件もないため、出所後ホームレスになってしまう場合も多いと言います。
ただ、ホームレスになるのが嫌だという思いから、ホームレスになるくらいなら、刑務所に居たほうがいいと考え、再犯を犯してしまう場合もあるそうです。
実際に、満期出所の方の2人にひとりが5年以内に再犯を犯していることが統計としても出ています。(平成27年犯罪白書参考)
そういった結果を見たからこそ、満期出所の方の支援をしたいと千葉さんは考えたと言います。
実際に、駆け込み寺時代に、歌舞伎町でパトロールをしていた際も、風俗営業などの客引きをしている方に声をかけると、「刑務所から出てきたばっかりなんだよ」というような声も多く聞かれたと言います。実際に家がない方の多くが、こうした犯罪に関する仕事をしているのが現状だそうです。
●生き直しではどのような支援をしているのか
家がないと再犯を犯すという流れが多いので、そういった方たちを減らすために、自立準備ホームの受け入れを行っています。
具体的な支援内容としては、
・役所の手続き支援(住民票を作るサポートなど)
・携帯電話を借りる際の手続き支援
・反社会勢力から抜けるための手続きのアドバイス
・賃貸住宅を借りる支援
など、さまざまなサポートを行っています。
●女性の出所者に対する支援
現在、女性の出所者に対して、施設の数が少ないのが現状です。
女性に帰る場所がないとどうなるか・・・、簡単に言うと、身体を売ってお金を稼ぐようになります。男性に助けを求めることもありますが、その男性が悪い人で、風俗などで働かされてしまうことも少なくないと千葉さんは言います。
結果的に、自分を傷つけて最後自殺をしてしまうケースも多いそうです。
そういった方たちを救いたいと言う思いから、千葉さんは女性の出所者のための施設もつくりました。最近は、出所者ではないけど、派遣切りにあって、家がなくて困っている方も受け入れていたそうです。
●自分たちに何ができるか
最後に、このお話が始まるまえに問いかけのあった、「もし親族が犯罪を犯してしまったら、あなたはどうしますか?」について触れながら、お話しくださいました。
千葉さんは、他人だからこそ助けられる。親族だとやはり裏切られた気持ちが強く、助けるのが難しいと言います。
社会として、そういった方がいたときに、出所者だからとレッテルを貼るのではなく、ひとりの人として困っているのだなと考え、みんなが手を差し伸べてあげることでその人が社会復帰できます。そういった人たちに壁をつくるのではなく、まずは対話をすることからはじめてみようと思う人がひとりでも増えてくれると嬉しい。とお話してくださいました。
●参加者からの質問
講座の後半は、参加者から寄せられた質問や意見に答えていただきました。
その一部をご紹介します。
【質問】
仕事で、家のない方向けの寮付きの仕事紹介をしています。相談者のなかで、出所者の方もいらっしゃいます。ネットで名前を検索すると過去の事件の内容が出てくるので、会社にこういう方ですという紹介をするときに、ネットで名前が出るレベルかー‥と。相手に思われてしまうことがあり、なかなか紹介先が見つけられません。ネットに名前が載ってしまった場合はどうしたらよいか、アドバイスをください。
(千葉さん)⇒一応、本人が申請をすれば、消すことはできる。民間の企業で、そのような事業をしているところもある。
また、こういった時に、協力雇用主が必要になる。実際は協力雇用主はいっぱいあるのだけど、そこにたどり着けないというのが問題ではある。せっかくあるのにうまくつながらないのが現状。
【質問】
千葉さんのメンタル的なフォローはどのようにされているのですか?
(千葉さん)⇒自分も何かあった時に相談できる人がいっぱいいるからメンテナンス的に救われている。さまざまな人に助けられながら、自分も相手を支援をしている。
生活を共にすることで、見えてくる部分がある。出所者の支援をするにしても、実際に出所してきた方に意見を聞くこともある。そうすることで、新しく出所してきた方に伝えられる情報も増え、その方が生きやすくなる。自分以外の人が先生です。
本編は以上となります。
こちらで紹介した以外にも、当日は多くの方から質問や感想が寄せられ、今回のテーマに関する関心の高さが伺えました。
イベント中に回答しきれなかった質問にも、イベント終了後にsli.doを使用して、ひとつひとつに千葉さんが答えてくださっていますので、ぜひこちらもご覧ください!
⇒
https://app.sli.do/event/7n7yerir/live/questions
また、生き直しでは、出所した方が、安心して暮らせるための施設の継続的な運営のために支援を募集しています。関心のある方は、以下のサイトからご確認ください。
⇒
https://ikinaoshi.com/
●本日のお話に出てきた団体のリンク先をご紹介します。
*株式会社生き直し :
https://ikinaoshi.co.jp/
●ご視聴いただいたみなさまからの感想
イベント終了後、ご視聴いただいた方にアンケートにおこたえいただきましたので、一部ご紹介します。
・生き直しの方のために、自分の意識を変えたいと思った。
・知らないことが多いことに改めて気がつきました。自分にできること、考えていきたいと思
います。あるのに使えない制度、なんとかしたいですね。
・再犯の方が半数近くいるという実態と共に、支援活動の効果もあるということは気付きでし
た。
そして、今回もグラフィックレコーディングで、わかりやすく、素敵にまとめていただきました!
ミヤマさん、ありがとうございました!
フミコム朝活では、グラフィックコミュニケーション講座も実施予定です!
8月21日(土)、8月28日(土)の2回連続講座となります。
こんな風に図式や絵を使って、お話の内容を素敵にまとめてみたいな~と興味を持たれた方は、ぜひ参加してみてくださいね♪
詳しくは文末に記載のフミコムホームページ内「講座・イベント案内」からご確認ください。
そして、次回のフミコムcafeは2021年8月18日(水)
近年、若年層を中心に被害が急増している「デジタル性暴力」をテーマに開催予定です。
オンラインにて配信予定ですので、ぜひご参加ください!
その他、フミコムではさまざまな講座を開催予定です。フミコムHPやフミコムFacebook等でお知らせしておりますので、ぜひご覧ください。
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