毎年好評をいただいている広報講座、今年は今後ますます情報発信もオンライン化が進むであろうことを踏まえて、SNSを活用してどう伝えたい相手に伝えたい情報を届けていくかを学びました。
Facebook、ツイッター、インスタグラム、LINEなどのSNSや、ブログ、ホームページ、YouTube等の動画配信も含め、情報発信はさまざまな媒体を使って行われますが、それぞれの特性を知らないとそもそも効果的な発信をすることは困難なので、まずは自分自身がSNSについて新たな気づきを得られるように、またSNSをどう使うかの手段の前に、そもそも「人に伝わる」とはどういうことなのかを知ることを講座の目標としました。
20数年前に急速に携帯電話が普及し、2010年代になってスマートフォンが主流に、昨今ではクラウドサービスが普及してきていますが、これは20年前には予想できていなかったことですが、私たちはそれだけ多くの情報に接する機会が増えています。言い換えれば情報があふれていて、どの情報を選択していいか、どの情報を信頼していいのかが難しくなっているとも言えます。
講座ではまず、そもそも「人に伝わるとは?」の部分の掘り下げから始めました。
●「伝わる」とは?
広報はよくPRとも言われますが、Public Relationsの略。日本語で考えると「公衆+関係構築」という意味です。自己PRと聞くといいことを発信するイメージですが、PRは発信だけでなく受信も、つまり広聴と広報はセットで、伝えたい相手の意見を吸い上げ、それを加工して広く伝えるということが本来の意味です。
何かを知らせるということは、その先にその情報を受け取る人がおり、相手との関係を形成していくためにどうコミュニケーションをとっていくか、これが大事なポイントになります。
では人との関係性づくりをどうするか?
それは難しく考える必要はなく、友達や同僚とどう接しているかにヒントがあります。
自分だったらどういう人と親しくなりたいか?という視点から考えて、普段やっていることを情報発信でも取り入れていくといいのでは、と谷さんは言います。
関係性ができていれば「○○さんからの頼みだから」と情報をシェアしてくれるなど情報発信のサポーターになってくれることも期待され、口コミのコミュニケーションが拡大していくことで効果的な発信もしやすくなっていきます。
だからこその伝えたい対象とのコミュニケーション、双方向性のやり取りで、自分を知ってもらうとともに相手のことも知っていく、この循環が大切になります。
かつて、ヤクルトスワローズの監督を務めていた野村克也さんが「キャッチボールをいい加減にする選手に、いい選手はいない。気持ちよく自分だけ投げるのではなく、どう相手が気持ちよく受け取るか。」と話していたことを例に出し、コミュニケーションも同じことで、伝える側と受け取る側の共通項を探していくことが大事であることを学びました。
情報発信というとどうしても発信側の立場のことばかり考えてしまいますが、情報は受け取る側を中心にして考えること、そしてそもそも、伝えたい相手は誰なのかがぼやけてしまうと軸もずれてしまうので、相手を明確にすること。これができそうでなかなかできないことだけに、講座の中でも繰り返しでできたキーワードです。
●SNSを知る
前提の「伝わる」の部分の認識を整えたうえで、いよいよ各論に入っていきます。
SNSはSocial Networking Serviceの略で、知人・友人とのコミュニケーションをとることが目的の媒体です。
この講座では、Facebook、Twitter、Instagram、LINEに絞ってまず各サービスの特徴についておさらいしました。
どの年代層が使っているか、全体の利用数の推移はどうか、どういう情報がなじみやすいか、長文なのか、短文なのか、写真なのか、文字なのかなどについて解説がありました。
やってしまいがちなのが、とりあえず各サービスのアカウントを作ってそのままにしてしまうこと。上記で学んだ、伝えたい相手は誰かを考え、その相手はどういうツールを使って情報を得ているか、まずはそこを検証することが大切です。
また、ついつい情報をどんどん流したくなってしまいがちですが、詰め込みすぎないことも大事と谷さんは話します。
そこで情報を完結させるのではなく、「もっと知りたい」と思えるきっかけづくりくらいに捉えたほうがよさそうです。
実際の関係性でもぐいぐい押されると面倒だと思ってしまうことがあるのと同じで、SNS上でも快くは思われないので、「程よい距離感、程よい関係性」を頭の片隅に置きながら情報発信を心掛けたいものです。
そして、もう一つ陥りがちなのが、SNSで発信すれば自動的に拡散されるのではないかという思い込み。シェアが広まっていくのは、知り合いのネットワークが広いからということだけでなく、発信者のことは知らないけれども、投稿内容そのものに対する共感があるから。どう情報の受け取り側の琴線に触れるかがポイントになります。
ではどういう情報が琴線に触れるのか。それを検証するためにも、ぜひそれぞれの発信の効果測定をしてみてほしいと谷さんは話します。
FacebookやツイッターなどのSNSではリーチ数などの数値を見ることもできます。反応がいいというのも受け取り手からのメッセージ、つまりは「公聴」。直接のコミュニケーションだけでなく、反応なども見ながら何をどう伝えていくか、日々の積み重ねが大事になってきます。
1日目の講義の最後は、効果的な情報発信のコツについて触れてもらいました。
上記でも、SNSの発信だけで情報を完結させるのではなく、「もっと知りたい」と思えるきっかけづくりの視点について触れましたが、それをどう実践するかについて学んでいきました。
効果的なのは、SNSとホームページやブログの情報を掛け合わせること。
各ツールによって情報に触れる人は異なってくるからこそ、一つだけでなく入り口を増やしていくことが大事です。またSNSの特徴として、過去の情報を探して見直すことは難しくなってしまうので、ホームページやブログなど、特定のところにアクセスすれば情報が見られるものとセットにしておくことで、いざ必要になったときにすぐに情報にアクセスしやすくなるという利点もあります。
また例えばTwitterやInstagramでは、特定のトピックに「#(ハッシュタグ)」をつけて発信することも広まっているので、それを活用して情報を収集すること、逆に発信する際にも、関係するようなものでよく使われているハッシュタグをつけて発信すると多くの人の目に留まりやすいなどのアドバイスもありました。
●実践+振り返り
1回目の学びをもとに、受講者の方々は各自の団体もしくは個人アカウントで発信をしてみて、そこでの気づきや質問などを発表しながら谷さんのレビューを受けていくことを2回目の講座で行いました。
・あふれる情報の中で目に留まるにはにはインパクトのある写真。例えば求人についての発信の場合は、「この人と働きたい」と思えるようなスタッフの様子が分かる写真などを使ってみてはどうか。
・Twitterは堅苦しい言葉よりも「楽しい」と思えるような情報が好まれがちなので、くすっと笑えるような情報も時折混ぜ込みながら、それぞれの発信の効果測定を行ってみる。
・アカウントをフォローしてくれる人はどんな人だろうということから考えて、その人はどんな情報があると嬉しいだろうということを考え、自団体のイベントなどの発信だけでなく、フォロワーさんが喜びそうな発信も織り交ぜていく(例:子育てのお役立ち情報など)
・社会課題系の発信をするときは「WHY」が大事。SNSで発信するときにそれを全部織り込むと長くなってしまうので、ホームページなど詳しく情報を得られるリンクをつけアクセスを確保しておくことが大事。そこに納得を得てから人の行動は変化する。
・参加者の写真は掲載できないと団体側が一方的に思ってしまっている場合もあるが、趣旨を説明して承諾を得るというコミュニケーション、チャレンジをすることそのものも大事。
情報の受け取り側からするとその活動の様子が伝わることで安心して参加することにもつながる。ホームページのトップ画像なども全く違うテーマのものではなく、関係するような画像を使うとよい。必ずしも現場の写真でなくてもフリーのイラストや、写真素材を使うことでもいいのでテーマはそろえる。
・開催報告はやりましただけではなく、受講者の声を載せることでより魅力が伝わる
などなど、実際に発信してみての気づきや、発信するうえで躊躇してしまうことも発表してもらいながら、その上で谷さんからコメントをつけてもらいました。自団体だけでなく他の方の発信を見て、それに対するコメントを聞くことで、自分の団体にどう生かせるかが参考になったという意見もアンケートで見られました。
この講座そのものもいわば入り口にしかすぎず、ここで学んだことをどう日常の活動に生かしていくか、そしてそれをどう振り返りをするかが大事になってきます。フミコムとしても受講された皆さんのフォローアップもしていけたらと考えておりますし、もっと日常的にかかわっている団体さん等とのコミュニケーションはとっていかないといけないなと私たち自身にとっても一番の学びとなる講座でした。
次年度も引き続き、広報に関する講座は開催していきたいと考えておりますので、行動するきっかけが欲しい、変わりたい、ステップアップしたい!と思っている皆さまのご参加をお待ちしております。
今回の講座でもグラフィックレコーディングとして、石川さんが記録をしてくださいました!他の講座ともこのように連動しながら動けるのが嬉しいですね。
また講座で扱っている内容もふんだんに盛り込まれた谷さんの著書「公務員のための伝わる情報発信術」も好評発売中です。
広報をそもそもから学んでみたい方にお勧めの一冊です!
http://www.gakuyo.co.jp/book/b548029.html