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活動報告・発行広報物

【開催報告】第59回フミコムcafeオンライン 食を通じて人がつながる、人を支える -せたがやこどもフードパントリーの実践に学ぶ-

地域連携ステーション フミコム
  • 文京区全域
  • 福祉・健康(高齢者/障害者/その他)
  • 子ども
  • その他
日時:2021年2月17日(水)19:00〜20:30
会場:オンラインにて開催
ゲスト:松田 妙子さん(せたがやこどもフードパントリー共同代表)
最大視聴者数:75名(*zoom参加者、YouTube LIVE配信視聴者の総数)

今回のフミコムcafeは、世田谷区で産前産後の家庭への地域につながるためのサポートを行いながら、コロナ禍ではフードパントリー活動を行う松田妙子さんをゲストに迎えお話を伺いました。

活動拠点は世田谷区ですが、現在文京区内の大学に通っているというご縁からご参加くださった松田さん。もともとおばあ様が民生委員で、夕方になると誰かがやってくるような「まちのよろず相談」の現場を見て育ったそうですが、結婚を機に三重県に移住。知らないまちで子育てをしたこともきっかけとなり、産前産後の支援の現場に関わるようになったそうです。

そんな松田さんが現在行っているフードパントリーの実際の倉庫の写真をバッグに、松田さんがもともと持っていた「こんな地域があったらいいな」「こんな地域になってほしいな」という想いの実践例や、これまでの活動がこのコロナ禍での活動にどのように結びついていったのかをお話していただきました。
●活動の原点にあるもの
まずはじめにご紹介くださったのは、松田さんが一番好きだという一枚の写真。そこには、地域の子育て広場で大人同士が話したり子どもたちがみんなで遊んでいる様子が写されています。松田さんは「どの人が利用者で、どの人がボランティアの方かわからない、こういうごちゃまぜが好き」と言います。

こうした支援する側・される側の境目がなく、子どもも大人もお互いに邪魔されず過ごせる場所を自分たちでつくりたい!と始めたのが、地域子育て支援拠点事業。地域で子どもを育てる「はじめの一歩」として、何か困りごとがあってから行くのではなく、”予防的”に普段から自分の居場所として通える場所として開かれています。現在、地域の人が組織化して地域の中の自分たちの居場所をつくるという方法で区内に広がっているそうです。
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●「餅は絵に描く!」
松田さんは自身を「実践型」であると言い、地域の中で何かあるとすぐに駆けつけるタイプとのこと。しかし、まちの中を調べたり制度を考えたりする行政の視点も重要であると話され、その行政に「今現場はこうなっている」と伝え続けることが自分の役目だと言います。
そうやって行政と「ああしよう・こうしよう」と対話してきた結果が、この世田谷区こども計画(※1)の図。こうして餅を絵に描いたことで、行政側の仕組みと、地域の中のインフォーマルな取り組みをつなぐ役割が必要だと気付くことができ、冒頭でもお話があった地域子育て拠点事業の実現につながったと言います。

(※1 世田谷区子ども計画(第2期):世田谷区が策定している、平成27年度から令和6年度までの10年間を計画期間とするもので、多様な子ども・子育て施策を展開。その後令和2年度から令和6年度を計画期間とする「世田谷区子ども計画(第2期)後期計画」が策定されている)。
●地域子育て支援拠点事業について
産前産後の保護者はさまざまな困り感を持ちつつも、「社交」の場だけだとそうしたマイナーな情報が表出されずらく、「私頑張っています」で過ぎていってしまう。だからこそこの地域子育て支援拠点では、イベントありきの場ではなく、「親子ともども一緒に育っていこう」という場として、日常のちょっとした出来事からプログラムを考えるようにしているとのことです。

また、そうした困り感の中には、運営する自分たちが気付かないといけないこともたくさんあると松田さんは言います。例えば、「あやし方がわからない」という保護者がいれば、「あやし方もわからないなんて」という目で見られることもある。そうではなくて、それは見た事なければわからないよね、じゃあ一緒に教えてもらおうよという想いから、「あやし方講座」を開催したこともあるそうです。

現在世田谷区には、自分の育った市区町村以外で子育てをする「アウェイ育児」の人も多く、そのような方たちも子どもを通してまちのなかにつながりをつくっていけるように、「アウェイ」を「ホーム」に変えられるようにしたいと言います。

そして、「”こんな自分のままでいられる場所”として、そしてそのつながりの先に”何かあった時に『困っています』と言える場所”として、小さな困り感があった時に一緒に取り組んでいきたい。なじみのない場所にいきなり『困っています』って、行きにくいよね。」と、優しく温かい口調で話されていました。
●区民版子ども子育て会議
一人一人の小さな困り感や些細なひと言に寄り添い、そしてそれをきっかけに地域のみんなと一緒にさまざまな場をつくってきた松田さん。
常にそうした現場に関わりつつも、前述の「餅は絵に描け!」にもあるように、行政の視点も大切であると考えた松田さんは、区民版の子ども子育て会議として区民と行政の対話の場をつくりました。

約6年続いているワークショップ形式の会議には、その時のテーマに関する分野の行政の方が参加してくれることもあり、そこで話したことが実現したこともあると言います。また、結果を出すことありきでなく、区民と行政のお互いが得意なことや苦手なことを知り尽くしているという状態が、とてもよかったと言います。

そしてこの会議でのつながりが、現在のコロナ禍での活動にもつながっており、「ちょっといい?」と聞ける人がたくさんできていたことが心強かったと言います。
●世田谷区地域子育て支援コーディネーターについて
区民版子ども子育て会議の場で実現した事例の一つが、世田谷区地域子育て支援コーディネーターです。制度やサービスを知らなくても、ちょっと困りごとを話したら逆引き辞典的に探してくれるような人や、その人に合わせたさまざまな資源をその人の周りに集めてくるような活動がしたいと考え、実現したとのこと。

子育て広場でいう「第三のスタッフ」的存在で、エリアに一人ということもありマンツーマンの個別支援は難しいけれど、広場で保護者がちょっと話されたことを、一緒に少しずつ一歩進めていけるような役割を担っているそうです。

今日のcafeでも何度も話されるほど、松田さんが大切にしているのはこうした”予防的”な関わり。「相談する」というのは実はとっても難しいこと。だからこそ、「こんなことでも相談していいんですか」というちょっとしたことから相談し慣れておくことで、重大なことが起きた時に、「あの人に言わなくちゃ」と言えるようになると言います。「すべて、餅を絵に描いたからできたこと」だと松田さんは話されました。
●せたがやフードパントリーの開始
ここからはいよいよコロナ禍での活動のお話です。
コロナで一気に自粛ムードとなった昨年の春休み頃、休校中の子どもたちに何かしたいと広場で漫画を貸し出すことにした松田さん。そのなかで、春休み中は給食がなくなり区からのお弁当も配布されなくなることを知り、広場に来てくれた子どもたちにおやつやパンを渡しはじめました。
毎日来てくれる子がいることにも気づき、そしていよいよ緊急事態宣言が長引くぞという時に、活動に対して寄付をしてくれる人もいたことで、松田さんの気持ちも引き締まったと言います。

そして、4月初旬に本格的に食糧の寄付を募り、せたがやフードパントリーを開始。地域の飲食店や八百屋さんにも協力を依頼してお弁当を配布し、夏頃からは食材配布に切替えて活動を実施。2021年1月末までに、128回の活動を行い、約260家庭510人以上の子どもたちに約9100食を提供したそうです。クラウドファンディングでお米を寄付してくださる方や、その他これまでのつながりからお手伝いをしてくれる人もいたりと、いろんな方が関わり実現したことだと松田さんは言います。
●フードパントリーの活動内容
実は世田谷区は10人に一人が生活困難層と言われており、地域の特性もありそれが見えにくい状況にもあると松田さんは言います。そのため、これまでは松田さん自身も、なかなか踏み込めずにいた部分でもあると話されました。

だからこそ、この活動では「場所に来てもらうこと」にこだわったそうです。実際に来てくれた人が今何が必要なのかをリアルに知りたいと思ったことや、ぽろっとこぼしてくれたことから情報提供をするなど、ただ食を渡すだけでない”つながり”を大切にしてきました。
もちろん、伝えられる関係性をつくるまでに時間はかかるけれど、少しずつ一言でも声をかけるうちに、「ちょっといいですか?」と話してくれるようになったと言います。

活動のなかには、松田さん自身も悩むような場面に遭遇することもあったそうですが、そうした経験も含めて「自己覚知(自分自身がどういう色眼鏡や固定概念を持っているかを自覚すること)できた」と松田さんは話されました。
●フードパントリーの実践を通して感じたこと
フードパントリーの活動に参加してくれる方々の姿や声を通して、「これもある意味で『予防』だな」と感じたそうです。「子どもたちになんとか食べさせたい!」と思って来てくれることはすごいことで、まずはそういう想いを思った方々と手つなぎしていくことが大切と気付いたと言います。

普段関わっているところが応援団としてありつつも、いざという時に必要な支援につながるような連携のネットワークが重要であり、そのネットワークを張り巡らせる「筋トレ」のようなものが地域には必要だと、松田さんは言います。
そして、「一ヶ所が手厚く支援するのではなく、薄くてもいいから何枚もあって、それを脱いだり来たりできた方がいい」と話されました。

まずは来てくれた人が「この地域でならなんとかやっていけるな」と思えるように伴走し、その姿から、今までなかなか届きにくかった人たちにもつながりが作れていくと信じて、今後も活動を続けていきたいと話されました。
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本編はここまででしたが、終了後も本編ではこたえきれなかったチャットでの質問にこたえていただきました。

そして最後に松田さんは、「フードパントリーの活動は参加してくれる人みんなが『自分事』にして始めたことの結集だった。何より活動が続いたのは、雨の日も風の日も誰かを想って取りに来てくれた利用者さんの力。」「ひろばを一歩出たらまちが砂漠、では困る。まちの中で見守ったり声を掛け合えるまちでなければ意味がない。そのために、自らが外に出て、つながりを持つように心掛けている」と話されました。まさに、”お互いさまがうまれるまち”のヒントがたくさん得られた会となりました。

今回はzoomとYouTube Liveの2種類から配信し、最大視聴者数は75名と大変多くの方にご参加いただきました。zoomのチャットも盛り上がり、「食」と「地域活動」というテーマに対する関心の高さがうかがえました。
終了後のアンケートより、参加者のみなさまからの声を一部ご紹介します。
・いろいろな視点から地域とのつながりを考えるきっかけになりました。
・松田さんが「こういう場所(フードパントリー)があったら、自分も困った時頼れるしね」と仰っていたことが印象的でした。
・アットホームな雰囲気でzoom感がなく良かったです。
・「ひろば」がオアシスでも「地域」が砂漠にならないようなサポートを仲間と模索してみます。
・まちの中に、心が灯る人が増えるよう、明日も巻き込み活動に励みたい!

そして、今回もお二人の方がグラフィックレコーディングに挑戦してくださいました!ありがとうございました!
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今後も地域に一歩踏み込めるようなさまざまなテーマで開催予定です。ぜひお気軽にご参加くださいね。