まずは事例の前段として、地域連携ステーション フミコムの根本よりお話させていただきました。
実は、文京区は中学生の不登校率が全国平均の1.7倍。また、義務教育の間は相談機関もあり、なんとか状況把握ができているものの、義務教育を終えると困りごとを抱えていても住んでいる地域のなかに相談する先がないということが大きな社会課題となっています。文京区社会福祉協議会(以下:社協)でも、そのような状況に課題意識を持ち、若者を支える仕組みづくりについて考えていました。そんな中で専門性を持って若者支援を行うNPO法人サンカクシャさんと出会い、若者支援の仕組みづくりを考えていく中で、活動を展開する拠点が必要と思っていたところに、社協に連絡をくださったのが株式会社シードさんでした。
そんなめぐり合わせのもと、社協を介してつながったシードさんとサンカクシャさん。3者が協働し今年8月にカフェ「DAISY BEANS(デイジービーンズ)」がオープンしました。
カフェを立ち上げるまでの経緯について、まずは株式会社シードさんからお話していただきました。
コンタクトレンズや眼鏡等の商品を展開しているシードさんでは、環境・社会・地域との調和をはかりながら社会貢献活動を実施しているとのこと。シードさんは本社屋近くで所有する空きビルを「地域の人が集う場所として、地域住民のために貢献できないか」と、社協へ相談に。これをキッカケに、社協から紹介された2団体と連携し、5階建てのビルを活用した地域活動を進めてきました。そうしたなか、連携を図ってきた団体の一つNPO法人サンカクシャさんより、元々地域になじみのあった1階の珈琲店跡地を活用し若者が働く場所としてのカフェをオープンしたいとの提案があり、今年8月にビルの1階にカフェ「DAISY BEANS」が誕生しました。
こうして無事オープンしたカフェの取り組みについて、NPO法人サンカクシャさんより団体の活動紹介をふまえてお話いただきました。
サンカクシャさんの活動の根底にある課題意識として「15歳から25歳の若者の孤立」があるといいます。義務教育を終えた世代への支援が途切れやすく、孤立しやすいという現状をふまえ、アウトリーチや居場所づくり、大人と接点を持ち社会に触れる機会としての“社会サンカク”といった活動を行っているとのこと。こうした活動を行うなか、若者たちから「接客業に興味はあるがコミュニケーションに不安がある」との声があがったことをきっかけに、「働くこと」や「接客」に挑戦できる場として、若者と一緒にカフェを一から立ち上げることに。
オープンして約2ヶ月。カフェで働く若者からは「一からみんなで取り組んだことが楽しかった」という声や、一から作り上げたことに伴う責任の重さを感じていたりと様々な気づきが挙がっているといいます。カフェで得た経験を今後にいかしていきたいという声もあり、事例発表者である木村さんは「“楽しさ”をベースに持ちながら、若者たちが色んな経験できる場所・内容を考えて活動している。若者にとって、安心できる人・安心できる場所の中で小さな経験を積み重ね、成功体験を積みあげていくことで、『自分も頑張ればできる』『色んなことに挑戦しよう』という気持ちも沸くのではと思う」と仰っていました。
今後は、まだ接客経験がない若者を中心とした職業体験の受け入れを行うなど、新たな取り組みを行っていくそうです。そして、このカフェで働くということが、人に頼ることやコミュニケーションに慣れていないと感じている若者にとって、「地域のみんなが応援しているよ」ということを体感できる空間・時間になってもらえたらと木村さんは言います。
また団体代表の荒井さんは、「団体だけで若者の仕事をつくったりサポートしていくにも限界がある。ぜひこの場をきっかけに若者の現状を知ってもらい、企業の方と一緒に取り組んでいけたら」と話されました。
サンカクシャさんからの発表をふまえ、改めてシードさんより、「カフェを利用する職員も多く、CSR担当以外の職員が身近に社会貢献活動を感じるきっかけになっている。今後はカフェに出向いた職員の声をいかしてもらったり、他の企業の方にもぜひ来店時には若者に声をかけてもらいながら、地域で若者を支えていけたら嬉しい」と、企業の視点から今後についてお話をいただきました。
事例発表のあとはグループに分かれて、事例発表を通して感じたことの共有や、これから取り組もうとしていることについて情報交換を行いました。今年は新型コロナウイルスの影響もあり、どのように社会貢献活動を行っていくか悩んでいるとの声が事前に多く寄せられていましたが、本会議の場で同じ地域の企業・団体同士で現状を共有し、今後について一緒に考える時間を作れたことは少しでも前に進むきっかけになれたのではと感じます。
終了後、参加者の皆さまにアンケートを実施しました。一部抜粋してご紹介します。
●事例発表について
・初めての参加であったが、地域の社会課題とその解決への取り組みがリアルにわかり大変参考になった。
・社内周知をすることで、社員一人一人の地域貢献への気付きが得られるシステムが素晴らしいと感じた。
・文京区の不登校率や社会に適応しにくい若者が意外といることに驚いた。
・サンカクシャさんの取組みはまさに社会貢献につながる事業であり参考になったとともに、協力できることがあれば支援したい。
・まだまだ今回の事例のような地域に密着した取り組みができていないため参考になった。
●グループに分かれてのトークについて
・ブレークアウトルームで密にお話できたのがよかった。
・多くの企業が地域貢献に関心を持っていることに驚いた。
・いろいろな企業と連携できる余地があるなと感じた。
・一企業で完結するのではなく、出来る事を持ち寄れば、出来る事が広がる期待を感じた。
・コロナ禍での企業での活動の困り事や事例を聞けて参考になった。
今回は本会議では初めてのオンラインでの開催となりましたが、事例発表に熱心に聴き入っている様子やグループトークでの和気あいあいとした雰囲気が、オンライン上でも伝わってきました。アンケートではオンライン会議での開催についても貴重なご意見をいただき、私達運営側としても今後に向けて大変学びの大きい機会となりました。
今後も地域・企業の実状に寄り添った情報提供を行いながら、文京区内の新たなつながりを生み出すきっかけとなるような場として開催していきたいと思います。
これまで会議に参加されたことがなく、社会課題解決・地域連携に関心のある企業様のご相談も受け付けておりますので、フミコムまでお気軽にお問い合わせください。