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活動報告・発行広報物

【開催報告】第54回フミコムcafeオンライン 「どう支える?外国につながりのある子どもの育ち・学び」

地域連携ステーション フミコム
  • 文京区全域
  • 文化(芸術/スポーツ/教育/その他)
  • まちづくり・安全
  • 国際・人権・男女共同
日時:2020年9月16日(水)19:00~20:30
会場:オンラインにて開催
ゲスト:東谷 知佐子さん
   (臨床心理士/公認心理師/NPO法人HATI JAPAN代表理事)
参加者:70名

4月よりcafeがオンライン開催になって、6回目を数えることになりました。今回はなんと参加者70名、テーマに対する地域のみなさんの関心の高さが伺われました。講師の軽妙なトークの一方で、参加者同士のチャットのやり取りも大変盛り上がりを見せたcafeとなりました!
講師は、臨床心理士・公認心理師として教育現場で活躍される東谷知佐子さんです。日本で暮らす「外国につながりを持つ子ども」が抱える困難について、社会の側からは見えにくい現状と課題、そして東谷さんの「密かな野望」についてもお話いただきました。
◆日本の「CLDの子ども」をめぐる現状とは・・・
今回のテーマになっている子どもとは、CLDの子ども(Cultually and Linguistically Diverse Child)「多文化多言語の子ども」のことです。ひとことで「外国人のこども」と言ってしまえば早いのではないかと思いますが、東谷さんは「外国と日本という線引きの問題で片付けたくないんです」と話されました。日本の義務教育年齢の児童生徒約99万人中、すでに約13万人が在留外国人の子どもです。また、日本語教育が必要であるにも関わらず受けられていない子どもが1万人以上いるそうです。

◆きっかけはインドネシアへの旅行
東谷さんが日本のCLDの子どもに注目したきっかけは、何度か観光で訪問したインドネシアでの経験でした。何度か訪問するうちに、現地の人に心理士として知られるようになり、子供たちの学習障害の相談を受けたそうです。そこで、日本とインドネシアでは子どもの生活環境などに大きな違いがあることがわかりました。その時、逆に日本の子どもたちについて、本当はその子たちの一部しかみていなかったことに、あらためて気づかされました。こどもの様子を「すこし変わった性格なんだな?」と思っていたけれども、それは本来持っている文化の違いによるものだと気づいたそうです。文化は多様なものであり、CLDの子どもたちも言語の問題や発達障害で片付けず、もっと幅広い視点で見ていく必要があると考えたのでした。

◆踊って歌える心理職になろう!
もともと、心理職として日本の教育現場に携わっていた東谷さんは、心理学からのアプローチにも疑問を抱きます。「『心理学化』とよくいわれるのですが、本来社会現象であることを心理学として分析すると個人の問題として考えてしまうことはよくあるのです。」そして、もっと社会に発信する立場を取ろうとの決意を込めて「歌って踊れる心理職になろう!」と思われたそうです。

◆言語の問題か それとも 発達の問題か
こうして、子どもたちへの支援を通じて、特別支援学級の先生方と一緒に取り組むことが多くなったといいます。その時に、この子は「発達に問題があるのか?」それとも「日本語ができないだけなのか?」を深く考えるようになったそうです。しかし考えているうちに、そんなに簡単に線引きできないことに気づいたとのことでした。
どの子どもでも最初に母語を学ぶときには、大人が語り掛ける言葉とイメージを心の中で組み合わせていくそうです。例えば「ネコ」という言葉は、まず猫が四つ足の動物で、爪でひっかくことや、抱くとふわふわしているといった感覚を覚えて、その動物を「ネコ」と呼んでいるのを聞いて、イメージと言葉を組み合わせているとのこと。そう考えると、言葉と発達過程はクリアに線引きすることはできないのだと東谷さんは話されていました。

◆日本の特別支援学級とCLDの子ども
ある調査によると、外国籍の子どものが特別支援学級に在籍する割合は全生徒平均の2倍だったそうです。また、CLDの子どもが特別学級でホットケーキを作る授業を受けていることを「言葉ができないだけなのに、かわいそう」と言っていたことにも疑問を感じたといいます。「特別支援学級は『入れられる』ところなのだろうか?」「この先生は、『かわいそう』と言う前に、ホットケーキ作りの学習はどのような目的のために行われたかをきくべきだったのではないか?」それぞれの文化を理解し、多様に対応する方策を子どもに関わる大人が連携合える事が大切ですねとおっしゃっていました。

◆子どもたちを支援する多職種の連携が必要
「チーム学校」という名で、さまざまな専門職が学校に関係していく構想はあるのですが、実は、専門職の連携がまだまだ少ないのが実情だそうです。地域の方々にも、同じことが言えて、障害を持つ子供の周辺にいる大人が幅広い考え方で連携し、支援していくことが大切なようです。「障害」とはその人の精神的・身体的な状態を言うのではなく、社会との間で起こる困りごとを「障害」と言い、みんながその困りごとの解決に連携していくことが一番大切だと思いますと語られました。

◆そして・・東谷さんの密かな野望とは?
東谷さんが最も重点においていることとして、子どもたちの生活の主人公は子ども自身で、苦楽をともにするのが家族であること、そして、子どもと家族をバックアップしていくのが私たち支援者としての活動だと語られました。「自分なりの社会への参加方法を子ども自身が考えることのできる社会づくり・・・私の密かな野望です。」と笑顔で締めくくられました。
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<講演中のチャットから質疑応答>
・参加者の中にも、幼少期を海外で過ごした経験のある方もおられ、ご意見・質問をたくさんいただきました。その中からいくつかに東谷さんにお答えいただきました。

◆母語教育の大切さについて
・いずれ母国に帰国したことを考えると、母語の教育も大切という意見に対して、「その通りだと思います。」と答えられました。子どもの発達や文化が多様であるといった原点にかえって考えていく必要があり、困りごとを解決するには、日本語教育が大切なのか、その他の支援が必要なのかみんなが連携していくことを話されました。

◆日本の学校では、そのような多様な対応はむずかしいのでは?
・学校へのスクールカウンセラーなどの専門職の配置は進んできているのに、専門職間の連携となるとなかなか難しいことを話されました。

◆心理職にもっと外の場に出ることが増えたら。
・実は心理職は分析対象が人の「こころ」を扱っているので、一定の枠を超えないように気を付けているそうです。取り返しのつかないダメージを与えてしまうこともあるのでなかなか心理職が思い切った行動にでるのは難しいとのことでした。

◆さいごに
・東谷さんがご自身からこのようにまとめられました。子どもは一日のせいぜい6~7時間を学校で過ごしているに過ぎず、大半は家庭や地域ですごしているといいます。子どもの背景にある多様な文化を理解して、支援できることはたくさんあり、例えば「やさしい日本語」を使って話すことも理解をすすめる良い取り組みとのことでした。


その後もしばらくお話は続き、文京区ではこんな活動をしている方も・・・ということで司会から紹介されたのは、文京多言語サポートネットワークさん。文京区内で、日本語を母語としない子どもや保護者への支援を行っていらっしゃいます。参加いただいた坂本さんと東谷さんで「やさしい日本語」で多様な方々とコミュニケーションをとっていくことが大切ですね・・と話に花が咲きました。

▼文京多言語サポートネットワークのホームページはこちらです。
https://bunkyotagen5sn.wixsite.com/info


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今回も、2名の方がグラフィックレコーディングを描いてくださいました。ありがとうございました。
館内に掲示しておりますので、ぜひいらした際にはご覧ください!

次回、10月21日(水)19:00~20:30 オンラインにて開催
第55回「面白がってやることが人やまちを元気に~街に飛び出すコミュニティナース~」をテーマにお送りいたします。ぜひ、ご参加お待ちしております!

開催案内:https://www.d-fumi.com/article/detail/1254