◎コロナ禍で変わるファンドレイジング
「コロナ禍で寄付する余裕なんてないのではないか」、「自団体の活動はコロナ禍支援とは関係のない活動だし」、「外出自粛でそもそも人に会う機会が減っている」
だからこの時期のファンドレイジングは難しい、そう思っている方も少なくないのではないでしょうか?
コロナ禍においては、医療分野への寄付、有名人からの呼びかけによる寄付、特別給付金からの寄付など、3.11以来の寄付の時代とも言えると思いますが、コロナ禍だからこそ特別にでははく、日常の延長としてファンドレイジングをとらえることが大切ではないかとの講師からの問いかけがありました。
◎ファンドレイジングの基本サイクル
ファンドレイジングとはそもそも「ファン(仲間)集め」の場。
課題を発信し、団体への共感を集め、課題解決のためにおこなうものであり、かならずしも「お金集め」だけを指すわけではありません。
コロナ禍に限らず、成功のためにはこれらが大事でであるとの指摘がありました。
・いきなりはじめない
・目標をたてる
・担当者のみでなく団体全体で取り組む
・活動しながらファンドレイジングをする
・明確に寄付をお願いする
まずは自分の団体のファンやその予備軍はどう分布しているかを分析してみることが大切です。
また、一般的に人が寄付するまでの行動と心理としては、
知る⇒関心を持つ⇒比較検討する⇒確認する⇒行動する
知ってもらう⇒相手にとって必要な情報を提供する⇒仲間として受け入れる
となることを踏まえると、
上記で分析した相手に応じてどう知って関心を持ってもらえるように情報を届けていくか、そのためにはどういうツールを使うかを検討していくのが次のステップとなります。
◎コロナ禍でもできるファンドレイジングとは?
対面で「出会う」「伝える・話す」ことが難しいなかでは、まず取り組めることとしては、すでにつながっている支援者との関係が途切れないようにコミュニケーションをとっていくこと、コロナ禍だからこそ団体として取り組んでいること、苦労していることなどを伝えていくことが考えられます。
一方で、SNSや動画配信などオンラインを活用して「知る」「関心を持つ」キッカケづくりをしていくのも一案です。
◎オンラインの活用方法
では実際に、どのようにオンラインを活用していったらいいのでしょうか?
ウェビナー(ウェブセミナー)などが広く取り入れられるようになってきたからこそ、「直接出会う」(=オフライン)の価値が高まるとも言えます。
気軽に参加できるオンラインの場をいかにつくりつつ、希少なオフラインの場への動線をつくっていくかの戦略を考えてみてもいいかもしれません。
一方で、思い浮かぶのはシニアをはじめとしたITになじみがない方々が多い層との接点をどう作っていくかは課題です。情報の大海であるオンラインの中で、他の団体や活動と自団体がどう違うのか、どこが特徴なのか、情報の伝え方、届け方に関しても他社との違いをど
う出せるかが差別化になりそうです。
また他者もやっているから、とすぐにSNS等での発信を始めたとしても、続かなければ意味がありません。持続して習慣として発信ができる体制をどう作っていくか、そのためには自団体にあった媒体はどれなのかを事前の準備の段階で検討しておくことが大切です。
◎クラウドファンディングとは
オンラインでの寄付集めと言ったらまず皆さんが思いつくのが「クラウドファンディング」ではないでしょうか。
直訳すると「群衆×資金調達」という意味になります。
100万円を1人から集めるのか、1万円を100人から集めるのか。それを一定の短期の間にインターネットを通じて集める手法のことを指します。
クラウドファンディングには2つのパターンがあり、目標額を達成しないと団体にお金が入らない「All or Nothing」か、目標額に達しなくても終了の時点で集まったお金が団体のもとに入る「All in」かとなります。
星の数ほどあるともいわれるクラウドファンディング、プロジェクトをリリースしただけでは人は集まりません!では成功しやすいプロジェクトとはどういうものか、いくつかポイントを伺いました。
いずれにしても、コア支援者や、既存の知り合い等とはプロジェクト開始前にコミュニケーションをとっておいて、最初の段階で寄付してもらえるようにすること、その方々からの呼びかけでさらに新規の支援者に広まる動線をつくれるかがカギとなります。
リターンは、モノというよりも「レアな体験」や団体との「一体感」が大事であるということを概観。
これはまさにオンライン時代だからこそのオフラインの希少性、というところとも関係してくるものかもしれません。
受講者からのチャット等ではこんなやりとりがありました。
・オンライン化をどう進めるか、オンラインをメインにしていくのかというのはメインターゲットをどこに置くのかというところから考えていく。ボトムに合わせるという考え方もあるが、ボトムに合わせると時間はかかるので、できるところから進めつつどう広げるかを模索する。
・オンラインの特徴は媒体同士をつなげてさらなる動きにつなげていける導線がつくれること。
・リターンも、モノというよりは「レアな体験」「称号」みたいなところが増えている。
・シニア層がオンラインの寄付に参加する、ファンになるみたいな仕掛けはどうつくっていったらいいか、オフラインでやっていたものをそのままオンラインでやってうまくいくとも限らないので、シニアの方にとって使いやすい、やってみたいと思えるような仕掛けを考えられるようなサポートができる中間支援的な存在が重要になってくるかもしれない。
◎2日目
クラウドファンディングについてさらに踏み込んで学んでいきました。
受講者の中でこれまでにクラウドファンディングに挑戦したことのある方は1名。その時は達成はしたけれども、プロジェクトへの思いや、なんのためにというところの伝え方にすごく頭をつかったとのことでした。
さて、クラウドファンディングのタイプは、出資に対するリターンの違いで「出資型」「購入型」「寄付型」に分けられれます。
クラウドファンディングがこんなに広まっている理由は、SNSの普及や元手がなく始められるから。
また、寄付そのものを集めるということと同時に、マーケティングや広告宣伝、アウトリーチにも活用されています。
続いてクラウドファンディングを成功させるための7つのステップについてのレクチャーがありました。
これをしっかりやろうとするとかなり労力がかかりますが、それだけ「簡単に立ち上げられるからと言って簡単に成功するわけではない」ということの裏返しでもあり、日頃から活動をしながらファンドレイジングをするという、運営体制をつくっていくことが大事であると改めて感じられるかと思います。
1 クラウドファンディングの特性を理解
2 プラットフォームの選択
3 タイトルと目標金額を決める
実は、写真とタイトルだけでクリック率は大きく変わってきます。
一目で何のために何がしたいのか、参加したくなるような表現を考えること。
また目標金額の設定の仕方としては、実際に集められそうな金額×3倍が目安で、サイト手数料も加味して無理のない金額からまずはやってみることがポイントです。
4 実施体制をつくる
原則でもある「ひとりでやらない」ということに照らし合わせて、
・プロジェクトの「顔」となる人
・お礼コメントや日々の投稿を行う実務作業チーム
・SNS投稿や知り合いへのDMを送る「応援団リーダー」
・全体の進行管理を行う人
を割り振れるとベターです。
5 事前準備をする
・事前のコア層や知り合いへのコミュニケーション
・あいさつ文の作成
・始まってからのSNSでの拡散や寄付者へのお礼メッセージ
・新規支援者向けのイベントやプレスリリース など
その上で前回の基礎編で学んだステークホルダー分析が役立ちます。
ファンと予備軍がどう分布しているかを分析し、その上で、近い支援者に対してのコミュニケーション、第二次支援者に対してのコミュニケーション、そこから大衆に対してのコミュニケーションをそれぞれどう打ち立てていくか。まずは実際に自分がそのプラットフォームで寄付をしてみることで、その動線を理解することにもつながります。
6 スタートダッシュとフィニッシュ
初日で目標の10%、1週間で目標額の30%行っていれば一つの水準をクリアしたと言っても大丈夫。
プロジェクト期間中にやることは、
・まずページのアクセス数を上げること
・活動報告、進捗報告はこまめに行うこと
・知り合いには個別にお礼をすること
・SNSでシェアしてくれている方にはそこにコメントでお礼を伝えること
・SNSやブログ等でこまめに進捗状況を報告すること(クラファンのプラットフォーム上だけではなく)
これはひとえにいかに日常から細かいコミュニケーションを他者ととる習慣をつけておくか、ということにもつながります。
7 クラウドファンディングごとのことを考えておく
本当に大事なのはプロジェクトが終了してから。というのもクラウドファンディングは非日常のいわば「祭り」のようなもの。
資金調達をしたプロジェクトそのものはむしろそこからがスタートのはず。
寄付した達成感で終わり、ではなく、継続的に関わってもらえるような仕掛けが必要です。
この日も受講者の方とチャットなどで活発な質疑がありました。
・第一次支援者の考え方について。クラファンは寄付をしてくれなくても拡散だけでも貢献は高いので、拡散やチラシを侵してくれるなど応援の仕方はたくさんあるので、応援団として支援してくれる、ということを考えると金額は必ずしも考えない。・想定人数は第三次支援者まで考えておくべき。これを出すと、既存は何人くらいで、みたいなことが見えてきて、この人にはダイレクトにお願いしようなどダイレクトに見えてくる。
・プロジェクトオーナーがインフルエンサーだと初期は集まるが、その人が忙しくて発信ができなくなることもあるので、裏方の人がサポートする必要あり。またリターンにどこまでお金をかけるかはよく検討する必要があると思った。
・今はコロナウィルスの影響でプロジェクトが乱立しているので時期はよく考える必要がある。通常だと6月中~下旬でボーナス支給などがあるので、呼びかけるには絶好の時期ではあるが、今やるのがよいのか、冬に向けていまから準備するのか。
・エリア型のプロジェクトのクラウドファンディングをする場合、気を付けるべきことについては、地域の方がそのプロジェクトにかかわることができるような動線をつくることがポイント。オンラインではなく、あえてチラシをダイレクトメールで送り、そこにQRコードを入れておくなどの工夫はできる。
・プロジェクトのタイトルはインパクトのある言葉というよりは、団体の特徴を的確に伝える言葉を考える。SNSではハッシュタグをうまく使うことも工夫のひとつ。
・クラウドファンディングの初動と最後の間がどうしても「中だるみ」みたいになってしまう時は、関連団体や著名人などの応援メッセージや、SNSでの「シェア祭り」などを行ってみる。
などなど、たくさんのヒントが得られる質疑応答となりました。
オンライン講座ながらインプットもアウトプットもたっぷりな講座だったのではないかと思います。講座を通して、活動そのものや持続可能な運営体制を見直すきっかけになったり、実際に新たなプロジェクトに取り組むなどのチャレンジにつながればと思っています。
引き続きフミコムでも日常的な活動相談をお受けしております!